2012年 薬木薬草園通信

1月号/vol.115 ミツバアケビ2月号/vol.116 コーヒーノキ3月号/vol.117 サンショウ4月号/vol.118 シナノミザクラ5月号/vol.119 ニゲラ
ミツバアケビ Akebia trifoliata (Thumnb.) Koidz 1月号/vol.115
薬用部分:茎(木通)
薬効:消炎・排膿・通経など
赤紫の長丸い果実。ぱかりと口を開いた中にのぞく半透明のゼリーは、とろける甘さ。アケビの実は山野を駆けまわる子どもたちが競って探した最高のおやつ。木の高いところにぶら下がる果実に、必死に手を伸ばしたものです。
食用とするのは、アケビやミツバアケビなどの果実。どちらも赤紫色で、熟せばぱかりと割れてしまいます。子どもの頃は皮は捨てていましたが、この部分はひき肉を詰めて油で揚げたり、刻んで味噌いためにして食べることができます。東北地方では春の新芽や若葉をおひたしなどに。
生薬名は木通(もくつう)。つる性の茎を乾燥させ、薄い輪切りにしたもの。ミツバアケビだけでなく、アケビ、ゴヨウアケビのものも抗炎症、消炎、排膿、通経などに用いますが効き目はほとんど同じです。
大人になった今でも、木々の間に目を向けて思わず探してしまうアケビの果実。食べてみればこんな味だったけ、と思わず首を傾げたり。駆けまわって腹ペコ、咽喉はカラカラ。そんなときに食べたから?それとも一番大きな実が欲しくて必死に木の登ったから?
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コーヒーノキ Coffea robusta 2月号/vol.116
まるでジャスミンのように甘く濃厚な香りを漂わせる、白い可憐な花。1年を通して咲き続けるこの花の後に結ばれる真っ赤な果実。それを割り、取り出した2粒の種子を焙煎して淹れるのがコーヒー。香ばしい香りと、ほど良い苦み、深みのある茶色の水色で世界中で愛されている飲み物です。今から1000年以降前の医学書には、種子の煮出し汁には、消化促進、強心、利尿作用があると記されています。
飲み物としてのコーヒーは、アフリカからアラビア半島、トルコへと伝わり、ヨーロッパへと広がりました。現在のように種子を焙煎し、抽出して飲むようになるのは13世紀。17世紀には、世界で初めてトルコのイスタンブールで今のようなコーヒーハウスが開業し、以降ヨーロッパ各地にコーヒーハウスが開店しました。日本へは18世紀に出島を通して伝わり、飲み物としてよりも、強心、利尿など薬用として効果が期待されていたようです。
コーヒーの起源の一説には、修行者たちが眠気覚ましに飲んでいたというものがあります。夜通し祈りを捧げる前に、一杯のコーヒー。受験を控えた学生さんたちも、勉強の前にコーヒーを飲んでもうひとがんばりです。
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サンショウ Zanthoxylum piperitum 3月号/vol.117
生薬名:山椒  薬用部分:果実(果皮) 薬効:芳香性健胃・整腸・利尿・駆虫
ぴりっとした辛みがあるサンショウの実は、古くから日本人に 親しまれてきたスパイス。
ウナギの蒲焼にかける粉山椒。サンシ ョウの実、ゴマ、ミカンの皮、アサの実、ケシの実、シソの実、唐辛 子の7つを合わせた七味唐辛子。ぬか床に入れれば糠の香りを 和らげ、佃煮や煮魚に加えれば臭みを消してくれます。
木の芽と 呼ばれる若葉は、お吸い物に浮かべたり、刺身に添えたり。一度 はどこかであの香りを味わったことがあるはず。 そんな食用にされるサンショウの実はくすりにも。
熟 して開いた果実から、黒い種を取り出したあとの赤い皮、 これが生薬、山椒。消化不良や腹痛に効きます。そのほか、 山椒を煎じた汁を温湿布にしてひびやあかぎれに。
陽の光も暖かに、春の兆しを感じ始める頃。 頭を出したばかりのタケノコを、木の芽味噌に 合わせた木の芽和え。口から鼻に抜ける 甘みとさわやかな香り。 旬のものをその時に味わうこと、 それもまたくすりです。
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シナノミザクラ Prunus pseudocerasus Lindl. 4月号/vol.118
生薬名:桜桃・桜桃水・桜桃核・桜桃根・桜桃枝・桜桃葉
薬用部分:果実・果汁・種子(核)・根・枝・葉
薬効:手足のしびれ・リウマチ・強壮・しもやけ・やけどなど
薬木薬草園の片隅で、いち早く満開を迎えたセイヨウミザクラ。花が終わったこの頃の楽しみは、膨らみ始めたサクランボがいつ真っ赤に染まるのか。
サクランボは桜桃(オウトウ)などとも呼ばれますが、くすりとして使われる“桜桃”はシロハナミザクラ(シナノミザクラ)の果実のこと。名の通り、白い花で実を結ぶ桜。桜に先立ち、3月頃から咲き始め、4月には花柄の先に丸い実りを結び、5月になれば宝石のように輝く赤に。これは手足のしびれやリウマチの痛みを和らげ、肌を潤し、体を強く元気にするくすりに利用されます。もちろん食用にも。しかし小ぶりで酸味があるため、現在出回っているフルーツとしてのサクランボはセイヨウミザクラをもとに品種改良を重ねたもの。果汁、種子、根、枝、葉もそれぞれ桜桃水、桜桃核、桜桃根、桜桃枝、桜桃葉といいししもやけややけど、麻疹の発疹、婦人病に。
枝についた真っ赤な果実を虎視眈々と狙うのは人ばかりではありません。春の歓びを歌う鳥たちも、また。赤い果実に小さくついたくちばしの痕は、待ち切れずに啄ばんだなによりの証拠。
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ニゲラNigella damascena L. 5月号/vol.119
薬用部:種子 用 途:利尿
細い糸のような葉。その葉に包まれて咲く、紫や白のニゲラの花。細い葉が霧に見立てられ、別名「霧の中の恋人」とも呼ばれているロマンチックな花です。 ヨーロッパ南部が原産で、日本には江戸時代末期に伝わりました。花が終わると、風船のようにまるく膨らんだ実ができ、熟して裂けると、中からメロンのように甘い香りを漂わせる黒い種子が出てきます。この種子は利尿や腸炎などのくすりとして使われるほか、お菓子の香りづけにすることも。ただし、全草には毒が含まれるので、茎や葉、可愛らしい花を口にすることはできません。
ニゲラは日当たりがよく、水はけがよければ土質を選ばずに育ちます。気付かないうちに、お庭のそこかしこでニゲラがすくすく、なんてことも。
細い葉と薄い花びら。でもどこかとげとげしい印象を持つ、ニゲラ。でもそれは、触れれば壊れてしまいそうな、心やさしい恋人なのです。
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