2010年 薬木薬草園通信

1月号/vol.91 マンサク2月号/vol.92 カカオ3月号/vol.93 スミレ4月号/vol.94 ジュウニヒトエ5月号/vol.95 クスノキ6月号/vol.96 ネムノキ7月号/vol.97 グロキシニア8月号/vol.98 ムラサキツユクサ9月号/vol.99 オシロイバナ10月号/vol.100 ハブランサス11月号/vol.101 クロモジ12月号/vol.102 ハッカ
マンサク 1月号/vol.91
生薬名:満作  薬用部:葉  用途 :消炎、止血など
日本各地、山や庭でも見られる花。リボンのように細く長い花弁は黄色。陽気な踊り子の手足のように、その花びらは優雅に舞い踊っているかのよう。やがて来る春を待ちわびる頃。他のどの花よりも早く咲き始めるマンサクは、“先ず咲く”花、が訛って「マンサク」になったとか。また、こぼれんばかりに咲く花に、“豊年満作”を思いこの名になったとも。
長年日本人に愛されてきたマンサクは、占いにも用いられました。花が上向きに咲けば豊作。花が咲かなかったり、少なかったりした年は凶作。
マンサクの枝の、花のツボミはそろそろほころび始める頃。ひとつ、ふたつ・・・たくさん。2010年。マンサクはきっと満開に花を咲かせ、幸多き一年をプレゼントしてくれるはず。
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カカオ 2月号/vol.92
薬用部:種子(カカオ脂/カカオバター) 用途:坐薬・化粧料の基剤など
2月になると何だか気になってしまう甘い香り。それはカカオの実から作られるチョコレートの香り。
2月14日はバレンタインデー。この日にはチョコレートを贈ったり、贈られたりする方も多いのでは。
多くの日本人が大好きなチョコレート。そのチョコレートと、日本人の出逢いは江戸時代。1617年、伊達政宗の家臣が、メキシコで飲まれていた液体のチョコレートを味わったのが最初、という説があります。当時のチョコレートはお菓子ではなく薬用飲料と考えられていたとか。確かにチョコレートは栄養価が高く、滋養強壮、疲労回復に役立つといわれています。
熱帯の地で、いっぱいの太陽の光と雨という大地の恵みを受けて育ったカカオの木。その実りだからこそ、チョコレートは元気と、甘く幸せなひと時をもたらすことができるのでしょう。チョコレートが、貴女の想いを届ける力となってくれますように。
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スミレ 3月号/vol.93
生薬名:菫菜 薬用部:全草 用途 :各種の腫れ物など
足元に…。小さく、奥ゆかしく咲いた紫色の花。フランスの英雄、ナポレオンにも愛された花。草丈はわずか15pほど。ひょろりとした姿とは裏腹に、コンクリートのひび割れからでも力強く顔を出す花、それがスミレです。そんな可憐で、たくましくもあるこの花の美しさに昔から誰もがうっとり…。
ボッティチェリの「春」には、さまざまな花とともにスミレの花が描かれ、ワーズワースは詩の中で、スミレの花について「空にひとつ光っている星のように美しい」と詠っています。
しかしスミレも名前の由来には、大工さんが使用する墨つぼ、「すみいれ」の形に花が似ているから、いう説が。
西風が吹いて現れた花の女神。ここには南風に乗って春がやってきます。
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ジュウニヒトエ 4月号/vol.94
薬用部:全草 薬効:健胃
春の野に舞うモンシロチョウ。そこかしこで咲く花に誘われ、彼らはひらひら、ふわふわ。そんな蝶たちが幾重にも重なり、集ったような姿で花をさせるのがジュウニヒトエ。
きらびやかな着物の名を得たこの花は、折り重なる花が官女の纏うそれに見立てられ名づけられました。道のわきなど、日当たりの良い場所で見られるこの花。茎や葉には白い毛が生え、どこか高貴な雰囲気を漂わせます。実は日本でしか見ることのできない珍しい植物。そのせいか花盗人の手により奪われ、数がすっかり減ってしまいました。
ただ、薬草として用いられることもあります。民間療法では、春の花が咲く頃に全草を摘み取り、日干しにしたものをおなかのくすりにします。
柔らかくなる陽射し。頬をなでるそよ風。春の芽吹きに心は弾み、見つけた花の美しさに目を奪われて。
でも、その花は摘み取らないで。次の春、その次の春にも、この場所で出会えることを願って。
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クスノキ 5月号/vol.95
薬用部:材/樟木(ショウボク)から得られた精油/樟脳(ショウノウ)
薬効:防虫・防腐・強心・消炎
薫る風にざわざわと鳴くクスノキ。一年中艶やかな緑の葉を茂らせる木ですが、実は今は落葉の季節。春に芽生えた若葉に未来を託し、古い葉は雨のように風に散っていきます。大人が数人、腕を広げなければ囲めない太い幹。
天を覆うように枝を広く巡らせた木は、まるで小さな山のようにこんもり。樟脳という防虫、防腐効果のある精油を含むクスノキは、虫に侵されにくく、成長も早いことから、このような大木になることもしばしば。そのため、船や寺社の建材として古くから活用されてきました。また、樟脳は防虫、防腐だけでなく、強心、消炎作用などがあり、薬用としても利用することができます。
衣替えをするたび、衣服に残った樟脳の香りがどこか疎ましくて…。五月の青空の下、夏服を風に晒したら、樟脳の香りがふわり初夏の空へと溶けていきます。
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ネムノキ 6月号/vol.96
薬用部:樹皮/合歓皮(ごうかんひ)
薬効:鎮痛・鎮静・利尿・駆虫・強壮・めまい
薄紅色の細い糸を束ねたようなネムノキの花。まるで線香花火のように見えるこの花は、いくつかの花が集まり形作ったもので、花びらに見える薄紅色の糸も、実はおしべ。
ふわりと触れれば、ほどけてしまいそうなほど繊細。でも、雨の続く6月から7月の景色を色鮮やかに変えてくれます。
ネムノキ、は「眠りの木」。夕暮れが近づく頃、咲きはじめる花とはうらはらに、眠るように閉じてしまう葉。それが「眠りの木」の由来。日本各地でも、「眠た木」、「眠りの木」などの名前で呼ばれています。薬用とするのは樹皮。打撲や捻挫、腰痛、関節痛などの鎮痛、利尿、駆虫、強壮などに効果があります。また、建材などとしても利用され、乾燥させた葉を香の原料とする地方もあるのだとか。
夜明けが近づけば、目覚める葉と、散り行く花。初夏の朝陽を遮る青葉の足元には、静かに眠りについた花たちの姿が・・・。
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グロキシニア 7月号/vol.97
イワタバコ科オオイワギリソウ属
原産地:ブラジル   用途:強壮・下剤
明治時代の初期に、ヨーロッパから日本に伝えられたグロキシニア。原産が熱帯のブラジルということもあり、夏に咲く派手な花は鉢花の女王と言われています。草丈は15cmほどと小さな花ですが、色は燃えるような赤、眩い白、高貴な紫、夜のような藍色、稚い桃色、花びらも一重のものや八重のものがあり、白い斑が混じることも。
日本ではオオイワギリソウ(大岩桐草)と言い、明治以降品種改良がすすめられ、園芸品種として好まれています。グロキシニアが薬用とされることはありませんが、原産地のブラジルでは、グロキシニアの仲間であるオオイワギリソウ属の植物が強壮や下剤として使用されています。
「智恵子抄」で有名な高村光太郎の妻、智恵子が初めて彼のアトリエにやってきたときに、持ってきたのもこの花。丸い地球の裏側。照りつける太陽と情熱の国からやってきた花は、日本の夏を鮮やかに彩り、どこかで誰かを、恋に落としているかもしれません。
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ムラサキツユクサ 8月号/vol.98
ツユクサ科ムラサキツユクサ属
薬用部:全草 薬効:利尿
楽しい夏休み。夏は早起きしてラジオ体操。あくびをしながら歩いた道の端には、夏草が青々と茂り、朝露に濡れています。その中には、珠のようなつぼみが房をなす、ムラサキツユクサの花も。
ムラサキツユクサは、花が紫で、花の形がツユクサに似ているので、「ムラサキツユクサ」。花が朝に開き、昼過ぎには萎れてしまうところもツユクサに似ています。
ムラサキツユクサの“トラデスカンティア”という学名は、17世紀後半、イギリス王室付きの庭師だったトラデスカントの名にちなむもの。植民地アメリカで出合ったこの花を、彼がイギリスに持ち帰りました。
イギリスの美しい夏の庭へ、庭師が招いたレディ。彼に愛された花は今、世界中の夏の庭で紫色の微笑みを見せてくれています。
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オシロイバナ 9月号/vol.99
オシロイバナ Mirabilis jalapa L.
薬用部分:根/紫茉莉根(しまつりこん)・葉・胚乳
薬効:利尿・水腫・切り傷・たむし・にきびなど
Four-O’clock。午後4時、という英名を持つオシロイバナは、太陽が沈む夕方から明け方ごろが見ごろ。紅や白、黄色、斑入りなど、ラッパのような形の「萼(がく)」が開きます。実は、花のように見えるのは萼(がく)で、花びらではないのです。
メキシコ原産で、日本には200年以上前に伝えられたといわれています。オシロイバナの名は、果実を割った内側(胚乳)の白い粉がおしろいのようであることから名づけられました。オシロイバナの果実が黒くなり始めると、女の子たちは“オシロイバナの粉”を集めて“お化粧遊び”をしたものです。また、この粉はニキビや吹き出物のくすりにも使われます。
ほかにも、葉は傷のくすりに、根を利尿のくすりとして利用します。
夏の終わり、蜩の声が物悲しく響く夕暮れ。いっぱいの太陽の下で大きく枝葉を広げたオシロイバナの株に、丸い花が咲き始めれば、ほのかに甘い香りが漂ってきます。
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ハブランサス 10月号/vol.100
ヒガンバナ科
原産地:アルゼンチン 薬用としては利用されない
梅雨の雨が続く中、ひょっこり顔を出し始めるハブランサス。ひょ ろひょろと細い葉と花茎。草丈10〜20pほどのところで開いた薄 桃色の6枚の花びら。梅雨の雨の中、夏の日差しの中と咲き続けた この花が、そろそろ終わりを迎える頃になりました。
大正時代に南米アルゼンチンから伝えられたハブランサスも、今 では日本の庭にもすっかり馴染んだようです。
ハブランサスは薬草ではありませんが、有毒植物として有名なヒガ ンバナと同じひがんばな科に属しています。別名“レインリリー”。 雨が降ると2、3日で花を咲かせてしまうことから付けられました。
誤ることなく、時が来れば必ず芽生え、花を咲かせるハブランサス。 雨に目覚めさせられた、薄桃色の花びら。雨に打たれ、日に照らさ れて夏と秋の二つの季節を咲き続け、もうそろそろ眠りにつくよ うです。細い葉に霜がつき、冬の気配がやってきたなら、また花咲 く日が来るまで静かに地中で眠るのです。
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クロモジ  11月号/vol.101
クスノキ科クロモジ属
用部:枝葉・根  薬効:去痰・脚気・胃腸炎・虫よけ
野山を歩けば、美しい秋色。その彩りを織りなすひとつが、蜂 蜜ような黄金色に染まったクロモジ。「黒い文字」を意味する その名まえは、樹皮の表面にある黒い模様が文字のように見え ることからつけられました。
樹皮、枝葉、根には黒文字油という精油が含まれているので、 手折れば良い香りが漂います。この精油は化粧品や石けんの香 料に。また、樹皮の模様が美しく、香りもよいことから、和菓 子に添える皮つきの爪楊枝が作られます。爪楊枝のことを黒文 字と呼ぶのはこのため。 くすりとしても用いられ、枝葉が釣樟/烏樟(ちょうしょう/ うしょう)、根が釣樟根皮という名で、去痰、脚気、胃腸炎、 皮膚病などに用いられます。
冬の近づくこの頃では、枝先に来年のための小さな冬芽。 その枝を少し拝借。湯船に浮かべれば、薬湯・クロモジ湯。 湯気に乗って広がる香りは、体と心をしっかり温めてくれます。
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ハッカ  12月号/vol.102
シソ科ハッカ属
生薬名:薄荷(はっか)/薄荷葉(はっかよう)
用部:全草  薬効:健胃・頭痛・めまい・熱・ 食欲不振
ツン、ととがった涼やかな香り。ハッカに含まれるメントールの 香りは、気分をすっきり、リフレッシュさせてくれます。 メントールは薄荷脳とも言われ、ハッカの葉を蒸留して得られた 精油から取りだされたもの。 ハッカの葉は薄荷葉という生薬として、健胃、頭痛、めまい、熱、 食欲不振などに用いられます。
また、古くは「目草」の名で、目 を洗い、疲れを癒すくすりとして使用されました。 日本には、奈良時代にハッカの栽培が伝わりました。特に、明治 時代からは北海道で盛んに行われるようになり、昭和の始めに は世界の約7割のハッカが日本で生産されていました。
中冨記念くすり博物館で開催される「第15回手作りお屠蘇教室」 では、このハッカを用いたおとそを、昔のくすり作りの道具「薬研」 を使って作ります。今回処方したハッカを含めた8種類の生薬は どれも体を温め、おなかを元気にする寒い冬に最適の処方。 ハッカのすっきりとした香りを吸い込んで気分を新たにすれば、よ い一年を迎えられそうです。
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