2007年 薬木薬草園通信

1月号/vol.55 ダイダイ2月号/vol.56 ロウバイ3月号/vol.57 アシタバ4月号/vol.58 ボリジ5月号/vol.59 ヤグルマギク6月号/vol.60 ブルーベリー7月号/vol.61 ビョウヤナギ8月号/vol.62 オニユリ9月号/vol.63 ハトムギ10月号/vol.64 ヨモギ11月号/vol.65 カツラ12月号/vol.66 ナンキンハゼ
ダイダイ 1月号/vol.55
薬用部:果皮  用途:鎮静・コレステロール低下など
新しい年を迎え、おうちでのんびり過ごすお正月。鏡餅の上にはころりと丸い「ダイダイ」の姿が。中国より日本へ渡ってきたダイダイ。酸味が強く、生では食べられませんが煮詰めればマーマレード、絞り汁はダイダイ酢、乾いた皮は七味唐辛子などにされ、また、ダイダイを湯に溶いて飲むダイダイ湯はぽかぽかと体を温めてくれます。そしてくすりとしても鎮静剤、血管の収縮剤、くすりの甘味付けシロップなど多様に用いられています。
冬には橙色に実の多くが落ちずに年を越します。その実は夏に再び緑に戻り、冬にまた橙色に。新しい実と古い実が同じ木になることから「代々」-ダイダイ-。
幸せが末永く受け継がれて行きますように…正月飾りのダイダイには、そんな願いがこめられているのです。
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ロウバイ 2月号/vol.56
薬用部:花  用途:鎮咳・解熱など
ダイダイといえばお正月を思い浮かべるほど、お飾りとして親しみのある果実です。インドのヒマラヤ地方の原産で、古くに中国より伝わってきました。生薬名を橙皮(トウヒ)といい、胃の調子を整え、痰を散らす効き目があります。
古い町並みを歩けば、ダイダイが植わっている家を良く見かけるのでは?
冬に熟する黄色い果実は、そのまま年を越し、夏にはまた緑色に変わります。そして冬に再び黄色に色づくという性質があり、去年の果実と新しく実る今年の果実が同時に枝になります。このダイダイの「代々の実り」が子孫繁栄に通るとされ、縁起のよさから庭木として好まれたからです。果実が落ちないどころか、色が青く戻るとは、まるで若返りの力でもあるかのよう。お飾りにされるのは、新年から黄金が入りますように…とのだそうですが。もしかしたら若返りの願いもこめられているのかもしれません。
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アシタバ 3月号/vol.57
薬用部:葉 生薬名:カイソウ 薬効:利尿・便秘・高血圧の予防など
今日摘んでも、明日には新しい葉を出す…「アシタバ」。とても生命力が強く、春から夏にかけてぐんぐん成長し、およそ1メートルの背丈にまで成長します。春先に伸びるつやつやとした光沢のある葉には、独特の香りと風味があり、お浸しや和え物、いり菜や天ぷらで味わうことができます。今ではあまり食べられなくなりましたが、豊富な栄養を含むため、昔はよく食べられていました。そして茎を切ると出てくる黄色い汁は利尿や便秘、高血圧の予防に効果あり。おいしいだけでなく、体にもよい薬草です。
摘まれても、摘まれても…。明日にはもっと青々と葉を伸ばして。そんなアシタバの姿を見ていると、それだけで元気が沸いてくるから不思議です。
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ボリジ 4月号/vol.58
薬用部:葉、花、種子  用途:強壮、利尿、咳止め 原産地:ヨーロッパ
白いうぶ毛に包まれた、たくさんのつぼみ。うつむきかげんに垂れるその中に覗くのは、青紫色の花びら。高さ40pから1mほどに成長するボリジは、花開いた姿が星に似ていることから、別名を「スターフラワー」と呼ばれています。こぼれ種で増え、次々に開く星の花。庭はまるで満天の星空のよう。ボリジは、古代ギリシャやローマの人たちに勇気を与えてくれるハーブとされていました。戦場に向かう兵士たちはボリジを浮かべた酒を飲み、戦いに臨んでいたと言われています。戦い前夜、兵士たちの頭に浮かぶのは、愛しい家族や恋人の笑顔。杯の中のボリジは、そんな兵士たちの勇気の心を奮い立たせていたのでしょう。ボリジに誓う想い…それは「勝って、再び、愛する人たちのもとへ」…
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ヤグルマギク 5月号/vol.59
薬用部:葉、花  用途:強壮、収れん、利尿 原産地:ヨーロッパ、西アジア
爽やかな初夏の風に揺られる、細く繊細な茎。すっと伸びたその先には青、白、桃色のヤグルマギクの花。その名は晴れ渡る五月の空に回る鯉のぼりの矢車に似ていることからつけられました。ドイツでは皇帝の花としたことから国花や紋章にも使われるようになりました。エジプトではツタンカーメンの墓から埋葬品とともにヤグルマギクが発見されています。 間をよける力があるとされた青の花。皇帝には悪しき力に負けぬ強さを。王には死の世界への旅立ちが守られるよう。 遙か昔からこの花にささげられてきた祈り。それは強い風に折られることなく、体を揺らすこの花の強さに魅せられたからなのでしょう。
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ブルーベリー 6月号/vol.60
薬用部:果実  用途:眼精疲労・整腸作用 原産地:アメリカ
初夏の陽射しの中、スズランに似た白い釣鐘状の花を咲かせるブルーベリー。ツツジ科の低木果樹で品種が多く、今までに150種類以上が確認されています。種類のよって背丈も様々。15cmくらいしか伸びないものもあれば、3〜4メートルにまで達するものも。花が終わると小さく丸い青紫色の実を結びます。原産国のアメリカでは原住民に親しまれてきましたが栽培され始めたのは遅く、日本に入ってきたのも1950年代のことでした。 第二次世界大戦中、ブルーベリー好きのイギリス軍パイロットは「夜間や明け方でも物がはっきり見える」と言いました。その言葉をきっかけにブルーベリーは研究され、アントシアニンという成分に目を健康にする働きがあることが発見されました。 初夏の暑い陽射しを浴びて濃く色づくブルーベリー。その小さな粒にぎゅっと詰まった甘酸っぱい風味は爽やかな夏の訪れを教えてくれます。
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ビョウヤナギ 7月号/vol.61
薬用部:葉・茎  用途:解熱、解毒  原産地:中国
土の上を覆うように伸びた枝葉の先に、たくさんの黄色の花をつけるビョウヤナギ。繁殖力が強いため、街路樹や庭木として植えられており、その姿を目にすることも多いと思います。ビョウヤナギは漢字で未央柳と書きますが、美容柳や美女柳と書くこともあります。同じオトギリソウ科のキンシバイとよく似ていますが、ビョウヤナギの方が花びらを反るほどに大きく開かせ、金糸のような繊細な雄しべを高く高く伸ばしているのが特徴的です。中国、唐の時代。玄宗皇帝が愛した楊貴妃を想う歌に「未央の柳」が登場しています。宮殿の柳に楊貴妃の眉を思い起こした皇帝が涙を流すのです。想う相手はすでにこの世におらず、訪れる深い哀しみ。傍らのビョウヤナギはただ静かに美しく咲いていたことでしょう。
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オニユリ 8月号/vol.62
薬用部:鱗茎(りんけい) 用途:鎮咳、消炎、鎮静   原産地:中国
暑い夏の日差しが照りつける中、大きな花を咲かせるオニユリ。「オニ」とは元々「大きい」という意味で、恐ろしい鬼とは関係ありません。濃いオレンジ色の花びらには一際目を引く黒い斑点。花は下向きに開き、花びらは天に向かって反り返ります。山地や道端、草地に生え、食用や観賞用としても栽培されているので、目にすることも多いのでは?地下の鱗茎(りんけい)には、ほんのりとした苦味があり、京料理、中華料理などで食卓に並ぶことも。種を作らない代わりに、葉の付け根に作る「むかご」から新たな芽を出します。体力を奪うような暑さがからだにこたえる季節。オニユリの力強く咲く姿を見ていると、夏に負けない元気をもらえるようです。
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ハトムギ 9月号/vol.63
薬用部:種子、果実   用途:消炎、いぼ取り、皮膚障害   原産地:中国、インドシナ地方
澄み渡った秋の空に届けとばかりに、丈高く育つハトムギ。姿はジュズダマに似ていますが、ジュズダマが上向きに果実をつけるのに対し、ハトムギは稲穂のように頭を垂れて果実を結びます。
中国では楊貴妃も煎じて飲んだと言う記録が残るハトムギが、日本に伝えられたのは江戸時代。中国、朝鮮半島を経てやってきました。ハトムギという名は明治時代に付けられたもので、鳩が好んでその実を食べたことに由来しています。
生薬名は“よくいにん”といい、古くからいぼ取りなどに用いられてきました。しかし、くすりとしてだけでなく、お茶として気軽に楽しむこともできます。香ばしい風味は夏に疲れた体を癒し、秋迎える元気をくれるようです。
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ヨモギ 10月号/vol.64
薬用部:葉 用途:鎮痛、止血、腹痛、腰痛 原産地:日本
青い空に儚く消えてしまいそうな、すじ雲が浮かび、冷たくなっていく風を感じる秋の日。外を歩けば、道々にはヨモギの姿。花は秋。1メートル近く伸びた茎の先に淡い褐色の小さな花をつけます。
餅と混ぜ、草餅や草団子作りに使われるのは春の若菜。葉や茎は止血薬として知られています。また、乾かした葉を揉むと残る綿毛は、お灸に使われるモグサとなり、古くから我が国で用いられてきました。
幼い日、転んですりむいた膝こぞう。つぶしたヨモギの葉を優しく当てられ、教えてもらった昔からの知恵。秋の散歩道にふわりと揺れるヨモギは懐かしい想い出をひも解いてくれます。
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カツラ 11月号/vol.65
用部:葉、樹皮など  用途:抹香(焼香用の灰)、染料など  原産地: 日本
秋風に乗って運ばれてくる甘い香り。香りの“元”を探して、見やった先には大きなカツラの木…。ホウキを逆さまにしたような姿のこの木は、公園や並木によく植えられています。ハート型の葉は秋になると黄色に染まり、綿菓子のような甘い香りを放ちます。この香りは、木からの秋の贈り物なのかも。
樹皮は染料に、幹は家具、楽器、彫刻に。黄色い葉は乾燥させ、粉状にして抹香(まっこう)と呼ばれる焼香用の灰に用いることも。
静かな秋の長い夜。カツラの甘い落ち葉を “しおり”にして、読書を愉しんでみてはいかが?
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ナンキンハゼ 12月号/vol.66
用部:根皮、果実、種子  用途:腫物、利尿、ロウソクの原料  原産地:中国
頬を撫でる風がますます冷たくなって、冬へと季節が移る頃。燃えるような紅に染まっていたナンキンハゼの木は、一枚、また一枚と葉を落としていきます。
葉を全て落とした寒々しい姿。しかし、枝の先には、たくさんの実り。割れた実からのぞく丸く白い3つの種。この種に含まれる蝋(ろう)から、ロウソクや石鹸、頭髪油などが作られています。また、根の皮には利尿効果もあり、くすりとしても使われます。
葉を落とした木々も凍える、冷たい冬。部屋の灯りを消して、ロウソクに炎を灯しましょう。
ふわり揺れながら灯る、暖かでやさしい光。それは、巡る季節の中でナンキンハゼが大切に育んだ贈り物です。
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