2006年 薬木薬草園通信

1月号/vol.43 マンリョウ2月号/vol.44 ハラン3月号/vol.45 レンギョウ4月号/vol.46 シロツメクサ5月号/vol.47 アヤメ6月号/vol.48 ドクダミ7月号/vol.49 アマチャ8月号/vol.50 イタドリ9月号/vol.51 ヒオウギ10月号/vol.52 ザクロ11月号/vol.53 クヌギ12月号/vol.54 クリスマスローズ
マンリョウ 1月号/vol.43
薬用部:根  用途:鎮痛・解熱
センリョウ、マンリョウ、アリドオシ…。一般的な正月飾りと言えば、「松・竹・梅」ですが、金運を祈願してこの3種類の植物を寄せ植え上する人もあるとか。「千両、万両があり通し(常にある)」とは、確かにおめでたい寄せ植えです。マンリョウは先月紹介したセンリョウによくにた植物。分布は四国、九州から朝鮮、中国まで。高さは30から60cmほどでセンリョウより少し小さめ。夏に小さな白い花を咲かせ、11〜3月に小さな赤い実をつけます。違いは先月紹介した通り、センリョウの実は葉の上に、マンリョウは下に。鳥に見つけてもらえず何年も残されたまま、ということもあるそうです。そして根の部分には鎮痛、解毒作用があります。マンリョウの鮮やかな赤い実を見ると、新しい年を迎えたのだと心も新たになります。新しい年もよい年でありますように、マンリョウは私たちにそう囁いています。
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ハラン 2月号/vol.44
薬用部:根・根茎 用途:利尿薬・強壮剤 原産地:不明
1年を通して青く艶やかな葉を見せてくれるハランは、3〜5月頃になると葉柄の根元、地面に近いところにつぼみをつけ、紫褐色の小さな花を咲かせます。春は花の多い季節、小さく地味なこの花は、なかなか人の目には留めてもらえないようで、「ハランにも花があるの?」なんて言われることもしばしば。このハランが何処からやってきたのかわかっては居ませんが、日本では関東地方から西南の暖地に育ちます。中国では各地の公園に栽培されていますが、栽培品のみで野生地がわかっていません。根茎は利尿薬や、強壮薬として使うことができます。呼び名も地方によってさまざま。ハラン、バレン、バラー、ヒロハ、ヒトツバなどの方言で呼ばれています。お弁当箱の中でおかずを仕切るために使われるバラン。その名はハランからきたもの。今はビニール製のバランですが、日本ではハランの葉を美しく切り取り、お弁当の中で目を愉しませてきました。近年、鹿児島大隈半島南西の東シナ海に浮かぶ島に、ハランの野生地が発見さました。ハランはここから中国、そして日本へ渡ったのでしょうか。ハランという名前は、こんな-波乱万丈-な運命によってつけられたのかもしれませんね。
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レンギョウ 3月号/vol.45
薬用部:果実 用途:消炎・利尿・排膿・解毒・腫れ物 原産地:中国
黄色い花を枝いっぱいに咲かせ、春の訪れを告げるレンギョウ。中国が原産のこの花は、江戸時代に日本へやって来ました。レンギョウには中国原産のレンギョウ、シナレンギョウ、朝鮮半島原産のチョウセンレンギョウなどの種類があり、庭や公園などで目を楽しませてくれています。
中国では生薬として馴染み深いレンギョウも、日本では観賞用として親しまれています。生薬は夏から秋に採集した果実を、消炎、利尿、排膿、解毒などに用います。古くは腫れ物の特効薬としても使われていました。
そんなレンギョウの花言葉は、叶えられた希望。枝いっぱいに咲き誇る黄色い花と、古くからくすりとして人々の力となってきたレンギョウは、その花言葉通り、希望に満ち溢れた花のように思えてきます。
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シロツメクサ 4月号/vol.46
薬用部:つぼみ・花  用途:風邪・鎮痛  原産地:ヨーロッパ
四葉のクローバーを見つけると幸せになれる…子供の頃、クローバー畑の中で4枚の葉っぱを一生懸命探した記憶が蘇ります。クローバーはヨーロッパ原産のマメ科、多年草植物で、1.5〜3p程の緑色の三つ葉が特徴的。花は5月から9月頃、小さく白い花が丸く集まったかわいい花を咲かせます。これがシロツメクサ。この花で花の冠を編んだ方も多いのでは?名前の由来は江戸時代、オランダから送られてくるガラス器の箱の中に詰められていたため。ガラス器が壊れないように詰められた白い花だから「白詰草-シロツメクサ-」。くすりとしては、つぼみや花を乾燥させたものを煎じて、風邪や鎮痛に用います。四葉のクローバーを見つけると、誰かに自慢したくなってしまいませんか?けれども、ガラスをやさしく守ったり、風邪を癒したり。こんな素敵な効果があれば、たとえ「幸運の4つ葉のクローバー」でなくても嬉しいものですね。
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アヤメ 5月号/vol.47
薬用部:根茎・根
薬効:胃痛・腹痛・寄生性皮膚病
昔から初夏を飾る花として、古くから日本人に愛されてきたアヤメ。草丈30〜60pのすっくと伸びた茎と葉に、白いレースを編んだような模様も美しい紫の花びら。アヤメという名の由来は、葉が並び生える姿があやを成すように見えること。姿も名も、美しく愛されている花ということがわかります。「いづれがアヤメかカキツバタ…」よく似ていて区別がつきにくいことのたとえとして用いられる言葉ですが、実は二つは簡単に区別することができます。水辺に咲くのがカキツバタ。そうでなければアヤメ。とはいえ、五月の節句に用いられるショウブもアヤメと勘違いされやすい花。それは姿というよりも、著される言葉のせい。漢字で書くとアヤメは菖蒲。ショウブも菖蒲…。そんなときは花の姿を思い出してみて。ショウブの花はツクシの頭のように小さな花が集まったもの。花のように見えない地味な姿は、艶やかなアヤメとはやっぱり別物です。
そしてもう1つ…「いづれがアヤメかカキツバタ…」は、どちらも大変美しい、といういみの最上級の褒め言葉でもあるのですよ。
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ドクダミ 6月号/vol.48
生薬名:十薬  薬用部:全草(地上部)
薬効:解熱・解毒・利尿作用・高血圧予防・抗菌作用
分布:北海道をのぞく日本各地・台湾・中国など
傘を差し、足元の水溜りを気にしながら歩くこの季節。道の脇にはドクダミが咲き始めます。「毒痛み」がなまって「ドクダミ」という名になったと言われるドクダミは、その名の通り毒や痛みに効く薬草。すりつぶした茎葉は傷に、乾燥させた全草は煎じて便通や利尿、動脈硬化の予防などに。その効果は10種類の薬並み、ということで生薬としての名前は「十薬」。まさに万能の薬草です。 けれど、あの独特な臭いのせいで嫌われがち。かわいいからと摘んでみて、臭いに顔をしかめることもしばしばです。ただ、あの臭いは乾燥すれば消えてしまいます。 雨の中で揺れる白いドクダミ。けれどツクシの頭のような黄色の部分、それがドクダミの花。白い部分は降り続く雨から花をやさしく守っているのです。
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アマチャ 7月号/vol.49
生薬名:甘茶  薬用部:葉
薬効:家庭薬や口腔清涼剤の味付け・甘味料・矯味料
分布:日本各地
長い梅雨があけ、陽の光がきらめきだす頃。澄んだ青空の下には、淡い紫の花が咲いています。アジサイよりもやや小ぶり、アジサイのように赤や青に色を移ろわせないこの花は、アジサイの仲間で、ヤマアジサイの変種と言われるアマチャ。
くすりとなるのは葉で、「甘い茶」の名の通りの味わいは、この葉を発酵させて得られるもの。これを煮出した甘い飲み物が、お馴染みの「甘茶」。4月8日、お釈迦様の誕生を祝う「潅仏会」では、お釈迦様の像に注ぎかけられたり、お客様に振舞われたりと欠かせないものです。 青々と茂った葉から得られる砂糖水のような甘茶の味わいは、花芽を摘んで得られるもの。目と心を癒す花の代わりに、渇きを潤し、心と体を癒す甘い水を与えてくれます。それはまるで人々を慈しむお釈迦様、その人のようにも思えます…。
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イタドリ 8月号/vol.50
生薬名:虎杖根  薬用部:根茎
薬効:抗菌・鎮咳・利尿・生理不順・ジンマシンなど
眩しい太陽に、もくもくとした入道雲。いよいよ夏本番のこの時期、海へ山へと出かける人も多いのでは?目に映るみどりたちは夏の光に輝き、大きく枝葉を伸ばしています。そんな中、丈は人の背ほど、卵形の葉と枝先には小さな手を伸ばしているような可愛らしい白い花の姿が…。この植物はイタドリ。虎の模様のような斑紋に、杖になりそうに茎が太いことから漢字では「虎杖」と書き、「痛み取り」が転じて「イタドリ」になったと言われるこの草は、根が抗菌、鎮咳、利尿、生理不順などに、若芽を揉んで傷薬にと古くから薬草として親しまれてきました。実は山菜としても人気があり、葉は天ぷら、若い茎は漬物や塩茹でで和え物、炒め物にと生かされ、地方によっては「山菜の王」と呼ばれているほど。
山歩きをするときは、イタドリの姿を探してみてください。山菜として味わうもよし、いざというときの傷薬にするもよし。イタドリは山歩きの楽しみに、そして心強い友になること間違いなしです。
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ヒオウギ 9月号/vol.51
生薬名:射干(ヤカン)  薬用部:根
薬効:消炎・鎮咳・消化促進
夏の終わりから秋の初め頃。天を刺し貫こうとするかのように伸びた剣形の葉から伸びる細い茎の先に、ヒオウギの赤い斑点の入った橙色の花が開きます。その美しい命の期限はたったの1日・・・咲いた花は夜にはしぼみ、次の花へ…。名の由来は扇状に広がる葉の形が檜扇(ひおうぎ)に似ていることから。根の部分は射干(やかん)と呼ばれ、消炎・鎮咳や消化器の機能を高める薬として用いられています。
「居明かして 君をば待たむ ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降るとも」
仁徳天皇を思って読んだとされる万葉集の歌。「ぬばたま」という枕詞はヒオウギの種のこと。艶やかに光る漆黒のヒオウギの種を、美しい黒髪になぞらえて、多くの歌人が歌に詠みました。
葉も、花も、種も、全て美しい…。風情に富み、目も覚めるようなヒオウギの美しさ。歌人たちは溢れる思いや情感をヒオウギに託し、歌をも花咲かせていたのです。
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ザクロ 10月号/vol.52
薬用部(生薬名):果実(石榴果皮)・樹皮(石榴皮)・根皮(石榴根皮)
薬効:駆虫・口内炎・扁桃炎・うがいぐすりなど
彩り豊かな木の実たちが秋の到来を告げる薬草園。ひときわあかく目立つ赤く丸い実は、みずみずしい真っ赤な種をはちきれんばかりにつめたザクロの実です。
ザクロは有史以来栽培されているといわれ、日本にも10〜11世紀に伝わりました。
種の多さは豊穣や栄華、子孫繁栄を思わせ、多くの実りを抱く姿が女性の姿と重なることから、ペルシアでは「生命の果実」と呼ばれ珍重されていました。それだけでなく、ザクロには豊富な栄養が含まれています。ザクロに含まれる"エストロゲン”という女性ホルモンは、更年期障害や月経・妊娠時に体調を整えてくれます。また、地球上で唯一「虫がつかない木」いわれるザクロは駆虫薬として使われたり、口内炎やうがい薬にも用いることができます。
知恵者で聡明な王とたたえられたソロモン。ザクロは彼をもとりこにし、花の彫刻で宮殿を飾り、庭にはザクロの果樹園が作られました。未来永劫に続く国の栄華と王の誉れ。ソロモンはこの果実に、そんな夢を見ていたのかもしれません。
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クヌギ 11月号/vol.53
薬用部:根皮・樹皮  生薬名:樸ソク
薬効:収れん・痔の出血
晩秋の頃、薬草園のみどりたちは冬のしたくに追われています。その中には、お椀型の殻をまとったどんぐりの姿も。どんぐりとはブナ科の木の実のことで、木々によって細かったり丸みを帯びていたり、さまざまな形をしています。その中でもクヌギのどんぐりは直径2センチとすこし大きめ。
縄文時代から私たちの暮らしに関わってきたクヌギ。その実は食料として、堅い材は建築に、シイタケの栽培にと用いられ、樹皮やどんぐりの殻では「つるばみ染め」という染物を行うことができます。また、根皮・樹皮は「樸ソク(ボクソク)」という生薬として、修練や痔のくすりとして使用されています。
深まる秋、足元に転がるクヌギのどんぐり。その丸い実に楊枝を刺し、独楽として回した想い出もあるのでは?しかし最近ではクヌギのどんぐりも、その木さえ見かけることが少なくなりました。
子供たちがどんぐりを集め、独楽を回して遊ぶ姿も見れなくなってしまうのかも。そんな寂しい秋が来ないように、クヌギの木々を守っていきたいものですね。
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クリスマスローズ 12月号/vol.54
薬用部:全草(特に根)  生薬名:なし
薬効:催吐剤・強心剤・刺激剤・麻酔剤など
肌をさす冷たい朝の空気。吐息で手のひらを温め、見上げた空は鉛色。植物たちも彩りをひそめ、hをおつぃ太木々が寂しげな雰囲気を漂わせています。しかし、足元には美しい花の姿も。
この花は明治の頃、ヨーロッパからはるばる日本へ渡ってきました。クリスマスの時期に花を咲かせ始めることから、つけられた名前が「クリスマスローズ」。“ローズ”という言葉から華やかなバラの花を連想しますが、恥らうように5枚の花びらを開く素朴で可憐な花。けれど、強い毒の持ち主で、ギリシャ語でヘレボラス(殺す食べ物)という悪名高い学名がつけられています。しかし、ひとたびくすりになれば、強心・利尿効果があり、哲学者たちは頭をよくするくすりとしても用いていたとか…。
「憂鬱を払い、心の病を治す霊薬」とも謳われたクリスマスローズ。寒さに耐え、凛と開く花に、心を励まされるようで…。「私の心を慰めて」という花言葉は、この花に願う思いなのでしょう。
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