2012年 中冨記念くすり博物館だより

1月号/No.200 アオキ2月号/No.201 ハナキリン3月号/No.202 クロモジ4月号/No.203 シダレヤナギ4月号/No.204 ムベ
アオキ 1月号/No.200
その名の通り、枝も葉も青い植物です。学名もアオキバと付けられたほど、瑞々しい緑色をしています。
5月に咲く花は、秋には2センチほどの楕円形の果実へと。重なる葉の中で視線が奪われてしまう鮮やかな赤。とても美しく、熟すとまるで宝石のようです。
不思議なことに、枝や葉を一たび切り取ってしまうと、黒く変色するという特徴があります。生の葉を必要な時に、必要な分だけ採取する、それが民間療法として用いる秘訣です。
患部にあぶったものを貼り、葉汁を煮詰めたものを塗れば、やけど、しもやけ、腫れ物などに。
痛みや炎症を抑える効果もあり、胃腸薬である“陀羅尼助(だらにすけ)”や“百草(ひゃくそう)”にも処方されています。 古くから薬用とされてきたアオキの葉。青々しく艶やか−。それはいつの日も。
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ハナキリン 2月号/No.201
陽光を好むハナキリン。日本のはるか南、マダガスカル島からやってきた植物です。
実は花と思っている紅赤色した花弁のようなものは、花を守るための葉で、本当の花はその葉の中心に小さく咲いています。古くなった葉は落葉し、そこに現れるのは暗褐色の堅い茎。驚くことに、長さ2pほどの鋭いトゲがあります。
ハナキリンの学名はユーフォルビア・ミル。ユーフォルビアとは古代アフリカのモーリタニア王の侍医、ユーフォルビウムの名に因みます。彼はハナキリンなどの茎から採れる乳液を処方したといわれています。ただ、何の治療に用いていたのかは謎のまま。
堅い茎とそれを覆う棘。それは大型の草食動物よりわが身を守るためなのか…。サバナで生き抜くための鎧をまとい、咲かせるのは可憐な赤。その花に惹かれてしまうのは、ハナキリンの美しい強さがにじんでいるからなのでしょう。
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クロモジ 3月号/No.202
眠っていた草木たちが次々に目覚める3月。クロモジの細い枝にも、淡い黄色の小さな花が咲き始めます。根元から幾筋も立ち上がる細い枝は、高さ2、3メートル。樹皮に黒い斑点のような模様があり、これを文字に見立てたことから“黒文字”と名付けられました。枝を手折れば、ふわり漂う涼やかな香り。甘酸っぱいレモンにも似たこの香りは、クロモジの樹皮に含まれる精油成分です。古くは化粧品や石けんの香料として輸出されていました。
根の皮は生薬名を「釣樟(ちょうしょう)」と言い、煎じて飲めば胃潰瘍、胃腸カタル、脚気などに作用し、濃い煎液に切り傷などを浸せば止血の効果があります。また、枝や葉を入れたお風呂に入浴すると、リウマチや関節の痛みが和らぎます。
枯れる時を悟ると、新たな芽を出すクロモジの木。多くの幹で形作られているのは、命を繋いできた証です。生き延びるため、新しい命を芽生えさせて…。
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シダレヤナギ 4月号/No.203
ネコヤナギ、コリヤナギ、タチヤナギなど、姿、形が随分違う数百の種があるヤナギ。日本でも30種以上を数えるそうで、代表的なのはシダレヤナギでしょう。
4月に入ると伸び始める新芽。柔らかな風にそよぐ姿はとても美しくて。
柳を詠んだ家茂の歌が残されていることから、奈良時代には既に中国より伝わっていたようです。柳の枝の楊枝で歯を掃除したり、枝葉を噛んだり。大正時代の頃までそんな用い方がされていたのは、樹皮にサリチル酸を含んでいるからです。後に、柳からアスピリンが作られることに。
アスピリンの誕生から100年。年間5万トンもの使用量といいます。
水際に枝垂れるヤナギに小枝が打ち寄せ、ゆらゆらと。そよ風が、葉音を立てて。平城の都人たちが詠んだ春の歌が聞こえてくるような…。
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ムベ 5月号/No.204
甘い香りに誘われるまま、鼻先に見つけたのは可憐なムベの花。小さな白百合のような花を咲かせるムベには、こんな故事が。
天地天皇は近江八幡へ行幸(ぎょうこう:天皇がお出かけになること)中、農家へお立ち寄りに。そこで出会った老夫婦にたずねた長寿の秘訣。二人の答えは、この地で採れる“紅紫色の実(紅紫:こうし・べにむらさき)”を食べているからだと。それを聞き、天智天皇は“むべなるかな”。
近江八幡で古くよりこの実が食されていたのは、滋養強壮の効果を求めてのこと。苞苴(おおむべ:神や朝廷に献上する土地の産物・貢物)であったことから“ムベ”と呼ばれるように。皇室への献上は、昭和後期(1980年頃)まで続いていたようです。
果実はアケビとよく似ています。卵よりやや大きく、秋に熟すと紅紫色に。茎や根は野木瓜(やもっか)という生薬で、強心、利尿の効き目があります。
蔓を伸ばし、大きくなり。花を咲かせ、実を結び。たくさんの種を残すムベを人は“長寿の木”と。
空を掴もうと、伸びる姿を見ては“宜(むべ)なるかな”。
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