2007年 中冨記念くすり博物館だより

1月号/No.140 ダイダイ2月号/No.141 ボケ3月号/No.142 アンズ4月号/No.143 アトキン薬局のくすり瓶5月号/No.144 日本発登場の胃カメラ6月号/No.145 カプセル剤7月号/No.146 シュメールタブレット8月号/No.147 くすりの箔着せ9月号/No.148 神農像10月号/No.149 紙看板11月号/No.150 売薬土産12月号/No.151 トウネズミモチ
ダイダイ 1月号/No.140
ダイダイといえばお正月を思い浮かべるほど、お飾りとして親しみのある果実です。インドのヒマラヤ地方の原産で、古くに中国より伝わってきました。生薬名を橙皮(トウヒ)といい、胃の調子を整え、痰を散らす効き目があります。
古い町並みを歩けば、ダイダイが植わっている家を良く見かけるのでは?
冬に熟する黄色い果実は、そのまま年を越し、夏にはまた緑色に変わります。そして冬に再び黄色に色づくという性質があり、去年の果実と新しく実る今年の果実が同時に枝になります。このダイダイの「代々の実り」が子孫繁栄に通るとされ、縁起のよさから庭木として好まれたからです。果実が落ちないどころか、色が青く戻るとは、まるで若返りの力でもあるかのよう。お飾りにされるのは、新年から黄金が入りますように…とのだそうですが。もしかしたら若返りの願いもこめられているのかもしれません。 。
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ボケ 2月号/No.141  
平安時代には伝わっていたとされる中国原産のボケ。日本の本草書にも古くより現れ、『大和本草(1708年刊行)』には鑑賞用としてその名を残しています。
丸みのある花弁の花が咲くのは葉が出る前のこと。朱赤に桃、白色の花咲く単色株の美しさもさることながら、一株に三色を咲かせる品種もあります。
自然に芽吹いてくる枝に咲く、色違いの花たち。その妙技に心惹かれるものは少なくなく、咲き分けの本能がよく判っていないいうことも、ボケの魅力を一段と深めているようです。
秋に熟す黄色い果実を浮かべた湯は、不眠症や冷え性に。また、果実酒は風邪に効きます。中国の故事に登場するのは、幽冥を越え、この世に咲く花として、若くして命果てた女性の化身になぞられたボケの花。
朱赤に桃に白色に、と花咲くその神秘性は、まこと黄泉の国に咲いているであろう花を思わせる美しさです。
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アンズ 3月号/No.142
サクラより一足早く春を告げる薄紅色のアンズの花。はにかむ乙女のようなその花は、 まさに春の色。果樹として栽培されている地域では、一面に植えられた杏が花咲くと、淡い紅色の霞が広がったような景色です。
アンズの果実が橙色に熟すのは、梅雨の頃。杏仁(キョウニン)という生薬名の種子に喘息や咳止めの効き目があります。
原産の中国にアンズにまつわる話が残されています。 病気の治療代を受け取らなかった菫奉(とうほう)という医師。かわりに彼は病の癒えたものたちにアンズの木を植えさせたのだとか。軽い病であれば1株、重い病が癒えたら5株…それはいつしか10万株以上の林となりました。300年も生きたといわれる菫奉。きっとその真実は、どこまでも広がるアンズの林だけが知っているでしょう。彼に救われた命の喜びが、今もアンズの果実を実らせているのですから…。
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アルバン・アトキン薬局 4月号/No.143  
イギリスはロンドン郊外にあった薬局。古いものです。今から100年以上前の薬局で、丸ごと船で運んできました。そして、そのまま同じに再現展示。ずらりと並んだ薬瓶の数々。日本製は茶色が多いけれど、こちらは青。まるで化粧品や香水瓶みたいで、とても綺麗。
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胃カメラ 5月号/No.144  
日本で初めて用いられた胃カメラは輸入品。それは、アメリカ製。海を渡ってきたのが、昭和37年だから、そう古い話でもない。 購入価格は、当時の価格で130万円ほど。今の貨幣価値に直せばおよそ1000万円!そんなに高価でありながらも、5台の胃カメラが日本へ上陸。 国産品が生産されたのは、それより4〜5年のちのこと。 今のものより3倍ほど太いチューブをこの胃カメラが使われていたことを想像しつつ…。 見てしまうと苦い笑みがもれる。
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カプセル剤 6月号/No.145 
カプセル剤には種類があり、大きさもさまざま。硬いもの、軟らかいもの。そして、色もかわいかったり。黄、赤、青、緑、桃色などなど。カプセル剤って、くすりを思い浮かべるときの代表格なのかも。つい見入ってしまう…。
ギュ!っと、効き目を封じ込めたような、そのカタチ。そんなところに、ちょっと魅せられてしまう。
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シュメールタブレット 7月号/No.146 
粘土板に刻まれた楔形文字。
板状に象った粘土がまだ乾かぬうちに、文字を刻む。先が尖るように斜めに切った植物の茎をペンにして。シュメール人の医師が記したのは…傷や病を治療するためのくすりの作り方。くすりの形、用途。用法を丁寧な文字で、何枚もの粘土板に。
チグリスとユーフラテス川が流れる…神に護られし世界初の都市国家。その繁栄がいつまでも続くためには、絶やしてはならないと考えた、シュメールの血。人類最古の文字を生んだシュメール人たちの願いは、数え切れぬほどの粘土板にこめられ。
そしてたくさんの命を救い、シュメールタブレットの名は、医学の歴史に深く刻まれたのでした。
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くすりの箔着せ 8月号/No.147 
丸い粒の茶色いくすり。
薬草を乾燥させて、刻んで、ふるって。こねて丸めていたむかしのくすり。
茶色なのは、薬草そのままの色だから。今のくすりは色とりどり。それは、仕上げ方が様々だからで。
見た目にも味にも一工夫。
むかしのくすりは、茶色ばかり?
いいえ、そんなことは。
むかしだって、金色、銀色の箔や朱色の染めで、茶色の粒をすっぽり色づけ。箔を被せ、見た目を美しく整えて。
そう、まるで服を着せるように。この施しを“箔着せ”と呼んでいたなんて、何とも粋。
小さな粒にもこめられた、日本人らしさ。
繊細な美は和心。
職人魂にあふれていた時代のくすりに捧ぐ言葉は天晴れ!
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神農 9月号/No.148 
野山や海辺、砂漠にも散らばっている草木に動物、石。その中に、からだに有効な働きをするもの、本草(生薬)を見つけることができる。
傷や病を癒してくれるそれらを探し求め、ひとつひとつを自らのからだでもって試した男が居たそうで。
中国の始まりにその名は残されている。
初代皇帝、神農(しんのう)。
神話によると、くすりの祖であり、また農耕も広めた神であったと。
だから、“神農”。
彼が発見した数え切れぬほどの生薬は、後世で『神農本草経』という書物としてまとめられ、今に読み継がれている。
日一度、毒物にあたっては命を落とし、また息を吹き返していたという神農。
それは、まさに神の力なり。
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紙看板 10月号/No.149 
電車待ちの駅のホームで、信号待ちする交差点で、広告の役目を大いに担っている看板。でも看板があるなんてごく日常の風景で、気付いていなかったりすることも。
昔のそれは、もっと人目を引いていた。
行商していたくすり売り(配置売薬)の時代には、店舗に掲げた木製看板のほかにも紙製のものが。
それは、行商先の宿屋で用いたもの。
軒先に吊るし、自家製のくすりを宣伝。もう一つの役目は、くすり代を用意してくれるようほのめかしたくて。
紙製だから雨が降れば濡れてしまうとしても、木版刷りだから看板が与える印象は強烈。力強い筆書き文字が、くすりの効果もやや大げさに、もっともらしく宣伝。
どどんと墨一色で刷られた紙看板。 そこに感じるのは、粋な心意気。
この一枚が目に入らぬか!みたいな、ね。
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売薬土産 11月号/No.150 
日本がまだ、いくつもの国に分かれていた時代。厳しい関所をくぐり、他国へ販路をのばそうと、どこまでもくすりを届けた売薬さん。
背負った大きな荷物の中身は、くすりだけではありません。
ひいきにくすりを使ってくれるお得意さんへ、おみやげを忘れちゃ話にならない。
くすりの種類もたくさんだけど、おみやげだって、いーろいろ。

観光名所の錦絵渡せば、まだ見ぬ国に思いを馳せて。
ほうら、これがお江戸の人気でね、と歌舞伎役者の錦絵差出し、ぱっと話に花が咲く。
団扇に、羽子板、櫛もある。
どれもみんな、季節や家族に合わせたお土産。
紙風船、もらったそばからぽんぽんと、はしゃいで飛ばす子どもたち。

庭先で売薬さんの声がしたときから、お母さんにお祖母さんもソワソワ。
もちろん子どもたちは駆けつける。
うれしいな
おみやげ何かな
薬箱を差し出す前から、ちょっぴり浮かれて。 いつの世でも心くすぐられちゃうおまけです。
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トウネズミモチ 12月号/No.151 
中国産のトウネズミモチ。日本のネズミモチとは葉の大きさや実の形も違って、葉の表面には艶がありやわらかく、果実は丸みがあります。
ただ、葉の形が日本産のネズミモチに似ていることから、唐(とう)のネズミモチ、という意味で名づけられました。初夏になるとまるで粉雪が降り積もったように、枝先が見えなくなるほどたくさんの白い花を咲かせます。花が実を結び、寒さが一段と増した12月頃、黒紫色に熟します。
中国で「女貞子(じょていし)」と言われるその生薬の効き目は、強心、利尿など。
冬の香りが広がる中、ヒヨドリの群れが押し寄せるトウネズミモチ。小さな小さな、この実がヒヨドリたちの春の歌声の秘薬なのでしょう。
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