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ボナノッテが描いた ダンテの『神曲』

ごあいさつ


 イタリアを代表する詩人ダンテ・アリギエーリは、1265年フィレンツェの小貴族の家に生まれました。幼い頃から古典文学を学んだ彼は、30歳になった年に医薬業組合に加入した後、次第に政治に深く関わっていきます。当時のフィレンツェは、ローマ教皇庁と神聖ローマ皇帝の勢力争いによって混乱が続いていましたが、ダンテもその政争に巻き込まれ、ついには市外追放の身となり、亡命生活を余儀なくされたのでした。そうした苦境の中で自らを主人公に書き上げられた壮大な叙事詩こそ、ルネッサンス文学の最高峰とされる『神曲』なのです。
 100歌からなるこの物語の中で、ダンテは3人の案内人に導かれて「地獄」「煉獄」「天国」を遍歴し、彼岸の旅を成就します。生前に罪を犯した人々が地獄で責苦にあえぎ、煉獄で罪を清め、天国へと昇る様子を目の当たりにしながら、次第に魂の浄化を遂げて行くのです。『神曲』は当時の画家たちにも大きな影響を与え、ボッティチェリやミケランジェロといった巨匠たちがいくつかの場面を描いています。
 そして今回、当館にゆかりが深く、現代イタリア美術界を代表する彫刻家チェッコ・ボナノッテ氏も、自国が誇るダンテの世界をドローイングによって表現することを試みました。本展は「地獄篇」34歌、「煉獄篇」33歌、「天国篇」33歌、の計100歌に対して、それぞれ1枚ずつ描かれた挿絵をたどりながら『神曲』の世界を体験しようとするものです。古今東西の優れた彫刻家は素描の名手であることが多いのですが、ボナノッテ氏の場合もこの例に漏れず、大胆な構図と繊細なテクニックが織り成す壮大なスペクタクルは見る者の心を捉えて離しません。  世界各地で頻発する悲惨な事件をはじめとして、厳しい世情に立ち向かわなければならない私たち現代人にとって、本展は疲れた心を癒し、正しく生きることの大切さを教えてくれる一服の良薬となることでしょう。


この企画展は平成14年10月1日から11月30日まで開催されました。
多くの方の御来館、誠にありがとうございました。

主催中冨記念くすり博物館
後援佐賀県教育委員会、鳥栖市教育委員会
協賛久光製薬株式会社
協力佐賀シティビジョン、CRCCメディア




なぜ「くすり博物館」で「絵画展」なのか?


中冨記念くすり博物館において、ボナノッテが描いたダンテ『神曲』を開催することになりました。チェッコ・ボナノッテは、当博物館建物の基本設計を手がけただけでなく、シンボルレリーフ「生命の種子」の作者でもあります。このレリーフでは、生命が生まれ、未来への希望を抱き、そして生きていく様を描いています。そのボナノッテがルネッサンス期を代表する文学、ダンテの「神曲」を描き、今回、当博物館においてこの作品を展示することになりました。

なぜ、「くすり博物館」で「絵画展」を行うのか?皆さんは疑問に思われるかもしれません。しかしながら「くすり」が持つ役割を考えるとき、それは疑問から納得へかわると思います。

私たちが利用するくすり。それは飲み薬だったり、貼り薬だったり、塗り薬だったり、目薬だったり…。頭痛を止める、咳を止めるなど、病の症状をぴたっと治してくれる、それがくすりでしょうか?

この絵画展では、ボナノッテが描く「地獄」・「煉獄」・「天国」の世界を作品の主人公であるダンテとともに歩くことになります。 ダンテが見るもの、感じるもの、それは時代を超えた私たちにも身に覚えのある「罪」や「苦しみ」や「悲しみ」、そして「愛」。
私たちは地獄にある人を見、正しく生きたいと願い、己の罪を償いたいと願うでしょう。
これもくすりなのです。
くすりは「治すもの」ではなくて、「治りたい」と思わせるものなのです

「病は気から」。人は誰しも「健康でありたい」、「明るく、楽しく生きていたい」と考えます。その気持ちが、病を退け、健康であることを支えてはくれないでしょうか?くすりはその気持ちを応援するものです。病気を治すのは生きる体と治りたいと願う心。くすりはこれを手助けをするするものです。


そして博物館は地域社会、“人”に貢献するものでありたいと当館では考えています。
だからこそ、当館では“人”と関わるということを大切に考え、人々の心穏やかで豊かな暮らしを支えるお手伝いができればと願っています。文化教育施設として皆様の学習や文化活動のお役に立つということ、これが博物館がもっとも持たなければならない機能です。その事業活動の一つが今回の展覧会です。

「ダンテ」、「神曲」。この言葉は知っていたとしても、その内容には馴染みがないのではないでしょうか?抑圧されていた自由な「生」が「ルネッサンス」のもとに華々しく甦った、この時代の不朽の名作を、ボナノッテの絵を通して皆様に紹介したいと考えました。
特に、次代を担う若い児童、生徒の皆様へ、時代を築いてきたシニアの皆様へ、総合学習の1つとして、生涯学習の1つとして…。


当館とボナノッテとの縁から生まれた「ボナノッテが描いたダンテ『神曲』展」。
チェッコ・ボナノッテの絵が、皆様にとって、心を和ませ、気持ちを癒す“くすり”となりますように。そして、この絵が皆様の学習のお役に立ちますように。


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