CSR活動 2016

特集

グローバルCSRを考える~久光ベトナム

久光製薬は、1994年に久光ベトナムを設立し、1995年からビエンホア工場で生産を開始しました。2006年にはベトナムから東南アジア各国への輸出も開始し、2016年現在で従業員約400名を抱える重要拠点となっています。
今回、今後のCSR活動の参考とするため、海外展開において重要な位置づけとなる久光ベトナムでステークホルダーダイアログを実施しました。

久光製薬と取引先

サロンパス®をはじめとする商品は、代理店を通じて薬局で販売されています。100を超える代理店との関係構築、2万を超える薬局での商品の取り扱いなど、サプライチェーンの管理は、久光ベトナムにとっても重要な課題となっています。
また、創業当初は日本からの輸入に頼っていた原材料の調達も現在ではベトナム国内での調達がかなりの割合を占めており、地域経済への影響も少なくありません。
主要な代理店であるCODUPHA CENTRAL PHARMACEUTICAL JOINT STOCK COMPANYの副社長であり、ドクターでもあるDr.BUI HUU HIENさんをお招きして、ベトナムの健康・医療事情を踏まえた社会的課題への取り組みを探りました。

進出日系企業(製造業)の 8.4%原材料・部品調達先 内訳
ステークホルダーダイアログ参加者

■ 参加者 : 右から
ナム :DO TRUNG NAM (久光ベトナム 総務副部長)
奥野 昌哉 (久光ベトナム 代表)
Dr. BUI HUU HIEN (CODUPHA社 副社長)
宮原 浩 (久光ベトナム ビエンホア工場長)
ハー :NGUYEN THU HA(久光ベトナム マーケティングマネージャー)
ロン :HO HONG LON( 久光ベトナム 営業サブリーダー)
■ 日時 : 2016年7月
■ 場所 : 久光ベトナム ホーチミンオフィス

■ 司会 :お集まりいただきありがとうございます。最初に簡単にCODUPHA社の紹介と久光ベトナムとの関係についてお伺いできますか?

■ HIEN :まずは、このような機会をいただけたことに感謝いたします。CODUPHA社は、ベトナム厚生省傘下の組織で医薬品・医療機器の代理店をしています。ホーチミンに本社があり、病院へのネットワークを通じた医療用医薬品や医療用機器、薬局などへの一般医薬品などを取り扱い、ベトナム全土をカバーしています。
サロンパス®は広く知られているだけでなく、信頼を持って受け入れられています。久光ベトナムには、同社主催のイベントへの参加、代理店会議などを通して、様々なことを勉強させてもらっています。

■ ハー :久光ベトナムでは、昨年、ベトナムでのサロンパス®現地製造販売20周年を迎え、様々なイベントを実施し、貼付剤の有効性、サロンパス®の使い方を多くのお客様に知っていただくことができました。
このイベントは、CODUPHA社をはじめ多くの関係者にご協力いただき成功することができました。

久光ベトナム ベトナムの町の風景01 ベトナムの町の風景02

■ 司会 :CODUPHA社でのCSRに関する考え方などがありましたら、ご紹介いただけますか?

■ HIEN :CODUPHA社には、3つのミッションがあります。
一つは、「国民の健康を守ること」二つ目は「薬局、病院などに対して十分な医薬品や医療機器を提供すること」最後に「価格を含めた市場の安定」これには、災害時の対応なども含まれています。
これらのミッションは、CSRの考え方と基本的に同じものだと思っています。

■ 奥野 :久光製薬は、経営理念として「世界の人々のQOL向上を目指す」を掲げていますが、ここベトナムでは、その具体策として、いまHIEN副社長が紹介されたようなミッションが必要とされていると思います。日本とは違った社会環境の中では、求められるCSRも変わってきますが、CODUPHA社のような代理店との良好な関係を構築していくことも重要な課題の一つとなっています。

■ 司会 :HIEN副社長のほうでは、久光ベトナムとの関係において、どのような課題があると思われますか?

■ HIEN :私が期待していることは、久光ベトナムが持っている様々な力をもっと積極的に発揮してほしいということです。今以上に多くのことができると思っていますし、その能力を久光ベトナムは持っていると感じています。
具体的には、貼付剤の可能性です。これは、ベトナムの医薬品に関する状況の改善に関わるものです。ベトナムでの医薬品は飲み薬が多く用いられますが、品質や副作用の問題などが起きています。久光製薬の技術である皮膚からの薬剤投与による効果面、安全面、多様性など貼付剤のメリットをベトナム国民に伝えてほしい。私も一人の医師として、国民の薬に対する理解を向上させる必要があると考えています。

ベトナム国データ

ベトナム社会主義共和国は、建国71年という人口9,340万人の若い国。
近年日本との関係は急激に拡大しており、ベトナムの商工会には、延べ1,500社を超える企業が会員となり、約15,000人の在留邦人がいます。
「日本の信頼度の割には日本企業のブランド力は課題が残っている」(JETROホーチミン事務所スタッフ)、「日本に対する考え方も市民レベルでは変化してきている」(JICA現地派遣職員)など、日本との関係も新たなフェーズに入る兆しが見られます。

経済成長率/1人当たりGDP/
インフレ率/貸出金利の推移

久光ベトナム

出所:2015年名目GDP、1人当たりGDP(全国)、経済成長率(全国)、インフレ率はIMF「World Economic Outlook Database April 2016」、1人当たりGDP(ホーチミン)は、ホーチミン市統計等を基にジェトロホーチミン事務所算出。経済成長率(ホーチミン)は、ホーチミン市統計局、貸出金利、為替は、IMF「International Financial Statistics」。※インフレ率は12月対前年同期比の数値。

■ ロン :久光ベトナムでは、営業活動においてサロンパス等の使い方、貼付剤の効果の説明を勉強会といった形で、代理店や薬局に働きかけています。非常に興味を持って聞いていただいています。

■ 奥野 :HIEN副社長にご指摘いただいたように、私たちの活動において、もっと積極的にベトナム国民のQOLを意識することも必要かもしれません。営業スタッフへの教育などを含め、課題として取り組みます。

■ 司会 :ベトナムの健康事情などは、どうでしょうか?

■ 宮原 :ベトナムは、平均年齢29.6歳、65歳以上の比率は6.7%という若い国であり、高齢化が進む日本とは違っています。日本では、スポーツとサロンパス®の関係が想起されますが、まだ、ベトナムではそういったイメージは強くないようです。

■ HIEN :ベトナムでは日常的にスポーツをする機会はあまりありません。子どもたちも勉強に忙しいようで、あまりスポーツに対して積極的ではないようです。
その中で、久光ベトナムが支援しているハノイモイマラソンは参加者が増え、南部においてもカントーマラソン大会も人気が出ているようです。

ダイアログ中の様子01 ダイアログ中の様子02 ダイアログ中の様子03

■ ロン :今後、経済発展に合わせて、日本のようにスポーツジムなどができて若い世代でも健康意識が高まるかもしれません。

■ HIEN :家族のつながりが強いベトナムでは、家の中で若い人たちもサロンパス®を見聞きしています。しかしまだまだ自分に必要なものとは思っていないようです。

■ 奥野 :スポーツとのかかわりで、日本のような意識を醸成することも今後は重要になってくると思います。
また、最近、熱が出たときに、額に冷却シートを貼る子どもたちが増えているようで、それぞれの年齢層に応じたアプローチを細やかに実施することも大切です。

■ ハー :営業活動において、保健所でのサンプリングで子ども連れの母親たちに対して接する機会もあります。これは病気や健康などに関する理解を深めていただくよい機会となっています。

■ HIEN :久光ベトナムは、代理店や薬局、保健所などに様々なチャネルでアプローチされているようですが、病院や医師へは、どうでしょうか。医師は、医療、健康へ大きな影響をもっており、彼らの理解と患者への助言がベトナムの健康に大きなかかわりを持ってきます。
一般の人に対しての影響力という面から、病院や医師に対しての働きかけもぜひ必要ではないでしょうか。私も協力します。

従業員とのダイアログ

300名余りの従業員がいるビエンホア工場において、現在抱えている課題や久光ベトナムの従業員としての意識をテーマに、創業時から長く勤めるスタッフとダイアログを実施しました。

  • ● ノック :入社20年 品質管理マネージャー 品質を扱う自分の職務に責任感をもって、これからは、「日本品質」と同一にするだけではなく、「ベトナム品質」を作っていきたいと考えています。
  • ● レ― :入社20年 生産管理マネージャー 生産管理では、日本の管理方法とベトナム人の考え方を合わせるのが大変です。従業員だけでなく、調達先との折衝についても同様です。
  • ● チャン :入社8年 生産管理リーダー 日本企業で働く自分には、ベトナム社会に対してできることがあるのではないかと思っています。もっと勉強すべきことがたくさんあると感じています。
  • ● コア :入社17年 メンテナンスサブマネージャー メンテナンスを担当した当初は、日々の要望や苦情への対応に大変さを感じていました。日本での研修で、様々な日本的なやり方を学び、成長することができました。
  • ● ナム :入社21年 総務副部長 これまでは、日本の良い面を取り入れることで成長してきました。これからの成長のためには、さらに一歩進めて、ベトナムと日本を融合した「久光ベトナムらしさ」を作っていくことが必要です。CSRという考え方はそれらを進めるための重要なキーワードとなるのではないでしょうか。
ベトナムの薬局 ベトナムの病院 久光ベトナム集合写真
ダイアログを通じて
宮原・奥野

■ 宮原 :取引先との関係構築やサロンパス®に対する信頼性は、「日本」に対する信頼性をベースに培ってくることができたと感じています。このCSRダイアログを通して、従業員の向上心を具体化することや、取引先との関係、ベトナム社会への影響など、多くの課題が確認できました。今後は久光ベトナムが日本とベトナムの良い関係性の構築に寄与していくことが必要であり、そのポテンシャルを持っているとあらためて感じることができました。「ベトナムのCSR」というローカライズを意識して取り組みを進めたいと思います。

■ 奥野 :「お客様第一」「QOLの向上」などは、ベトナムでは日本以上に具体的な社会課題であり、「品質」「雇用」といった事業活動などとも直接的なつながりを持っていることが痛感できました。
また、工場やオフィスのスタッフを通じて、文化的な多様性を踏まえて事業を発展・継続させることのメリットと課題についてもより明らかになったと思います。
HIEN副社長からのご指摘があったように、地道な営業活動に加え、社会とサロンパス®、社会と久光ベトナムの関係を再考することで、代理店や薬局との協力をベースに、新たなアプローチの可能性も感じられました。
今回のCSRダイアログを実施したことで、商品の製造販売が、ベトナム社会の今後の健康のあり方に対して大きなつながりがあることを、改めて認識することができました。「世界の人々のQOL向上を目指す」取り組みを、今後も積極的に進めたいと思います。

CSR(企業の社会的責任)というと、環境保全や社会貢献といったイメージを持たれることも少なくありませんが、事業活動全般において検証することも必要です。今回、久光ベトナムでダイアログを実施し、海外事業をCSRの側面から検討することで、日本では見えづらい、従業員教育における新たな視点、取引先関係の展開、地域社会が抱える課題への影響など、多くの課題とチャンスが埋もれていることを再認識できました。
また、「ダイバーシティ(多様性)」という側面についても、日本国内では「女性」に特化しがちですが、文化、慣習、経済状況、生活様式など様々な側面からとらえることで、事業を発展・継続させることの意義と課題についてもより明らかになりました。今後も、世界の人々のQOL向上に貢献するため、ダイアログなどを通じてグローバルなCSR活動を推進してまいりたいと考えます。

文化事業・CSR推進室 室長 森崎 亜紀子

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